パラアスリート視覚障がい(T11/12)・上肢機能障がい(T46)はエリートや一般ランナーらとともに9時50分にスタートしました。雨が降り続くなか、今年は国立競技場前(外苑西通り)をスタートし、競技場内にフィニッシュする21.0975㎞のコースで競われました。
男子視覚障がい(T11/12)の部は前回世界記録(1時間8分30秒)をマークして優勝した唐澤剣也(T11/SUBARU)が1時間9分20秒で連覇を果たしました。
「昨年に続き、今年も優勝できてよかったですが、目標は世界記録更新だったので、それを達成できなかったのは悔しいです。来年出場できるなら、リベンジしたいと思います」
全盲の唐澤にとっては雨の影響で滑りやすい路面には恐怖心が大きく、普段以上に慎重になりスピードの上げ下げが生じたことでタイムロスや疲労にもつながったと言います。
それでも、「ペース的には昨年とそれほど変わらず、中盤も粘れたので、これまでの走り込みの成果は見える走りだったと思います」と手応えも口にしました。
■世界記録、誕生!
パラアスリート女子視覚障がい(T11/12)の部は道下美里(T12/三井住友海上)が1時間24分48秒で初優勝を飾りました。このタイムはT12女子ハーフマラソンの世界新記録でした。昨年も世界記録を越えるタイムでフィニッシュしたものの、ガイドランナーが先にフィニッシュラインを越えてしまう違反で失格となっており、2年越しでの新記録達成となりました。
道下は、「(一般ランナーと同じレースで)パラアスリートにも注目いただける大会だからこそ結果を出したいと思っていましたが、去年は(失格という)悔しい思いをしました。今年は必ずゴールにたどり着くことを目標にスタートラインに立ちました。(ガイドの)志田さんが今年も一緒に走ってくれて、ちゃんとリベンジができてよかったです。チームの絆が深まりました」と笑顔を輝かせました。フィニッシュ後は真っ先に、志田ガイドに「ありがとう」と声をかけたそうです。
志田ガイドは昨年失格し、「やり場のない悔しさがあったので、ようやくゴールできたという思いですし、道下選手がまた僕を選んでくれて感謝の思いしかありません。選ばれたからには選手を確実にゴールに運ぶのがガイドの役割なので、本当にほっとしています」と安堵の表情で話しました。
「雨のレースで不安もあり、序盤は動きも悪かったのですが、志田さんが声でうまく導いてくれて世界記録につながりました。このレースは(マラソンシーズンに向けての)通過点。うまく走り込みができている手応えを感じられました」と振り返った道下。より深まった志田ガイドとの絆も糧に、今後のさらなる飛躍に期待です。
■上肢障がい
パラアスリート上肢機能障がい(T46)の部は永田務(新潟市陸上競技協会)が1時間10分57秒で優勝しました。永田は東京パラリンピックのマラソンで銅メダルを獲得しましたが、次回パリ大会でT46のマラソンが種目除外となったため、今年からパラトライアスロンにも挑戦を始めたなかで今大会を迎えていました。
「T46は私一人だけでしたが、この大会に招待いただけて感謝しています。パラトライアスロン転向を決めており、現在は水泳やバイクの練習に力を入れながら、来年3月までにマラソンでの世界記録更新も狙っています。これまでの練習の成果と現状を把握したいと思って今大会に参加しましたが、手応えと課題の見つかるレースとなりました。今後のマラソンでの結果に結び付けたいと思います」
13日の記者会見では自身と同様の上肢障がいのある人にも挑戦のきっかけになればと語っていた永田。マラソンとトライアスロンとの二刀流のチャレンジは多くの人の刺激になるのではないでしょうか。
新城薫運営統括本部長アシスタントレースディレクターは、パラアスリートの部について、「悪天候のなかでしたが、選手の皆さんはいいレースを見せてくれました。今後もチャレンジできる大会を提供して、パラアスリートの記録向上につなげていきたいと思っています」とレースを総括しました。
来年もまた、多くのパラアスリートの挑戦をお待ちしています。