パラアスリートT11/T12(視覚障がい)の部はエリートや一般のランナーらとともに8時5分、雨、気温18.2度、湿度57.5%のなか、スタートしました。
男子はパリ2024パラリンピック男子マラソン(T11/T12)代表の熊谷豊(三井ダイレクト損保)が初優勝しました。マークした1時間9分33秒は男子T12クラスの世界新記録という快走でした。
熊谷は今大会に向けてパリ大会の疲労を抜きながら、準備してきたそうですが、大会直前のポイント練習ではいい走りができず、「不安だった」そうです。それでも、スタート後は、「感覚は悪くなく、タイムは気にせず、自分を信じて走りつづけた」と振り返りました。レース終盤、気合を入れようと周囲の一般ランナーに「ラスト勝負しましょう」と、自ら声をかけたそうで、ラストスパートの競り合いが好記録につながりました。熊谷は大会前の会見で、「この大会は(視覚)障がいを気にせず、平等に競えるのが魅力」と語っていた言葉を、まさに体現した形となりました。
パリ2024パラリンピックでは途中転倒もあり、10位と悔しい思いをしましたが、「初優勝もでき、いいリスタートになった。上出来だと思う。今後も体調を整えて多くの大会にベストな状態で臨んでいきたい」と、今後に向けて意気込みを語りました。
熊谷と24秒差の2位には前回、前々回の覇者、唐澤剣也(SUBARU)が入りました。パリ2024パラリンピックでは男子5000mT11(視覚障がい)で銀メダル、1500m同で4位と活躍。今大会に向けても、「東京2020大会のレガシーを次世代に伝える貴重な大会。(ブラインドランナーの)私がいい走りをすることで、『見えていなくても走れる』など、パラスポーツの魅力をより多くの方々に伝えたいという気持ちで準備してきた」そうです。
レース後は3連覇を逃した悔しさもあるなか、「パラリンピックから時間のない中、急ピッチで仕上げてきた。設定通りのタイムでいけて今の力は出し切ったが、1着だった熊谷さんが我々の想像を超える、さすがの走りだった」と勝者を称えました。
3位には1時間10分59秒で、パリ2024パラリンピック男子マラソン(T11/T12)7位入賞の堀越信司(NTT西日本)が入りました。
女子は前回優勝の道下美里(三井住友海上)が1時間26分46秒で連覇を達成しました。女子マラソン(T11/T12)で銅メダルを獲得したパリ2024パラリンピックからまだ1カ月あまり。調整も十分でない中でしたが、「前半から設定したペースを、(ガイドの)山下くんとしっかり刻むことができ、最後はビルドアップもできた」と地力の強さを示しました。3年連続の出場で、「沿道からの『みっちゃん』という声援が年々増え、認知されていると感じられて嬉しかった」と振り返り、コース上でも前を行くランナーが、「道を譲ってくれたりして、走りやすかった」と、感謝しました。
現在、47歳とベテランですが、4年後のロサンゼルス2028パラリンピックも視野に入れながら、「後輩ランナーと切磋琢磨しながら、自分もいい走りをして、いいバトンが渡せるように頑張りたい」と、さらなる意欲を示しました。
2位には1時間32分02秒で和木茉奈海(IMV)が、3位には1時間35分44秒で西村千香(岸和田健康クラブ)が入りました。
東京マラソン財団運営統括本部の新城薫副本部長は、エリートや一般ランナーと同時スタートの「パラアスリート T11/T12(視覚障がい)」について、「心配されたスタートやフィニッシュで混乱もなく、よかった」と安堵の表情で振り返りました。男子優勝の熊谷について、「力強いレースを見せてくれた」と称え、女子を制した道下についても、「年齢を感じさせない力強い走りだった。また、大会記録更新を目指してほしい」と期待を寄せました。
他にも多くのパラアスリートが自己の目標に挑みました。来年もさらに多くの選手の挑戦をお待ちしています。

