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SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

TOKYO LEGACY HALF 2024

レガシーアンバサダー 入江陵介さん、一ノ瀬メイさん インタビュー

レガシーアンバサダーとして出場する元競泳⽇本代表の入江陵介さんと一ノ瀬メイさん。入江さんは今回が初めてのハーフマラソン、一ノ瀬さんは2度目の挑戦となります。オリンピック、パラリンピックという⼤舞台で活躍してきた二人の新たなチャレンジへの思いを大嶋康弘レースディレクターとの対談で語っていただきました!(以降大嶋RD、入江、一ノ瀬)
前編ではレガシーハーフマラソンのコンセプト、メインビジュアルに込められた思い、また一ノ瀬さんが感じた「ランの力」を教えていただきました。

人生の中で“次の一歩”を進んでいただけるきっかけに

――はじめに、今年就任した大嶋ディレクターから東京レガシーハーフマラソンのコンセプトや目指すもの、伝えていきたいレガシーなどを教えていただけますか?

大嶋RD まず説明の前に、一ノ瀬さんはこの東京レガシーハーフマラソンに昨年初出場して完走されましたよね。タイムはどれくらいでしたか?

一ノ瀬 2時間45分です。リミットの2分前でした(笑)。

入江 え、リミットあるんですか?

一ノ瀬 ありますよ! 聞いていないんですか?

入江 いやいや、聞いてないです! 間に合うかな(笑)。

一ノ瀬 うわ~(笑)。

大嶋RD (笑)。ちなみにハーフマラソンの世界記録はどれくらいか、ご存じですか?

入江 1時間10分くらい?

大嶋RD 実は男子で57分。1時間を切っちゃっているんですよ。

一ノ瀬 え、速ぁ~。私、3倍近くもかかってるじゃないですか。

大嶋RD 女子も1時間2分くらい。だからすごくスピードがあって、見ていても面白いランニングのイベントなんです。それで東京レガシーハーフマラソンというのは、もちろんそうしたトップ選手たちによる競技としての側面もこれからもっと充実させていきたいのですが、東京マラソン財団の願いは日本の中でより多くの皆さん誰もがランニングを楽しんでいただきたい。その入り口としてハーフを走ってほしいというコンセプトのもと大会がスタートしました。そして、走ることを楽しむことによって、人生の中で何か“次の一歩”を進んでいただけるきっかけになるようなイベントにしていきたいという想いで開催しています。お二人は東京レガシーハーフマラソンに関して、どのようなイメージを持っていますか?

一ノ瀬 「お祭り」というイメージですね。去年、実際に走らせていただいて、一番衝撃を受けたのはお祭りみたいな盛り上がりだったこと。水泳をやっていたころはみんながタイムを狙って、世界を目指しているという競技スポーツとしての大会にしか出場したことがなかったんです。だから、東京レガシーハーフマラソンには記録を狙っている人もいれば、新しい一歩を踏み出すために出場している人もいるという層の厚さを感じました。そうした中でみんながお互いを応援して、サポートし合っていましたし、ボランティアさんも含めたお祭り、スポーツの祭典みたいな雰囲気は初めて。それがすごく印象に残っています。

大嶋RD そうでしたか。そうした雰囲気はまさに大会が目指しているものだと思いますね。入江さんはどうでしょう。

入江 僕自身、ランニングの大会に出場することが今回初めてなので、正直、不安はあります。やっぱり使う筋肉が水泳とは違いますし、「最後の5kmはどうなってしまうのだろう?」とか心配な要素はたくさんあるのですが、逆にそれが楽しみでもあるんです。今まで味わったことがない感覚を踏み出せるというのは、恐怖心もありながら新しい自分のスタートになるのかもしれないとワクワクしています。その中で今、一番楽しみにしているのは沿道の皆さんの顔を見て、手を振って交流しながら走るということ。僕がやってきた競技ではなかなかできなかったことなので、そこはすごく楽しみですし、特別な大会になるのかなと思っています。

『ハーフなら、ギリいけるかも』に共感!

大嶋RD 家族やお友だちが沿道に応援に来る。ファミリーイベントのような、気楽にリラックスして参加できるイベントだと思いますね。一方、今大会のメインビジュアルに関して、最初に見た時にはどのように思いましたか?

一ノ瀬 自分の気持ちが反映されているのかなと思ったくらい(笑)、私は好きです。私の周りでも『ハーフなら、ギリいけるかも。』というキャッチコピーを見て、「そうやねん!」みたいな、自分の思いを代弁してもらっているような気持ちになった人がすごく多くて、私はめっちゃ好きです。

入江 一見、陸上大会のポスターとは思えないじゃないですか。

一ノ瀬 確かに!

入江 そこが逆にキャッチーと言いますか、親しみやすさにつながっていると思います。陸上の大会感をバーンと出しちゃうと、「自分はそこまでのレベルじゃないから……」と一歩踏み出せなくなってしまうかもしれませんが、このポスターは親しみやすさがあってメッセージ性もあるので、新しくチャレンジしてみようかなと思えるビジュアルだなと思いますね。

大嶋RD トップアスリートのお二人にこうして共感していただけるのはすごく嬉しいですね。一歩踏み出すための共通点のようなものも感じていただけたのかなと思いますが、一ノ瀬さん、昨年実際に走ってみて、やっぱりキツかったですか(笑)。

一ノ瀬 はい。ホント、10kmを超えてからめっちゃキツかったです。さっき入江さんが「最後の5kmが不安」とおっしゃっていましたけど、「レベル高っ!」って思いました。私なんか最初の1kmから不安でしたから(笑)。

初めて走るランナーに向けてのアドバイス

入江 大嶋さんから初めて走る人に向けて何かアドバイスはありますか?

大嶋RD たぶん、レースを初めて走るときは周りの雰囲気がすごくて自分の気持ちも高揚してしまうから、自分が想定していたペースより速く走ってしまうと思います。なので、しっかりと時計を見て、自分が設定したペースを忠実に守ってコントロールするということが大事かなと思います。オーバーペースになるとやっぱり後半がキツくなってしまいますから。

一ノ瀬 去年、まさにそのアドバイスを言ってもらいました。だから、最初はめっちゃ抜かされます。でも、気にせずにペースを守ることが大事ということですよね。

大嶋RD はい。コースの特徴としても最初は少し上りですが、その後はずっと下りが続くと思います。だから、ついつい速く行きがちですし、まだ体力的にも元気なので「今日は行けるかも」と思ってしまうのですけど、そこは我慢して、しっかりと自分の設定タイム、ペースを守っていただくことが大切だと思いますね。それともう一つアドバイスするとしたら、エネルギーの補給。走る前にきちんと糖質を摂る、レース途中にはしっかりと水分を摂るなどしていただければ、途中でエネルギー切れを起こすことなく走り切れるのではないかなと思います。

一ノ瀬 あと、去年アドバイスしていただいたことで「ホンマや」と思ったのが、『練習で10km走ることができればハーフは大丈夫』ということ。私は去年、まず1kmを走るところから始めたので20kmを走るところまで届かなくて、練習では10kmくらいまでしか走れなかったんですよ。でも、確かに本番では完走できた。それは沿道の皆さんの応援とか雰囲気とか、練習にはない色々なエネルギーがあったから、当日はそれで押していってもらえたのかなと感じましたね。

大嶋RD そうですよね。沿道の応援がすごいですから、今回もそれに後押しされると思いますよ。

一ノ瀬 ホント、応援はすごい! 「ゴールしたらビールオール!」っていう看板を持っている人もいました(笑)。

まずは一歩踏み出してみることに意味がある

――では一ノ瀬さん、昨年初挑戦を決めた経緯などを改めて振り返っていただけますか?

一ノ瀬 当時は引退してから1年半ぐらい経っていたのですが、私の場合、もう一生分泳いだと思っていたので、プールはいったん見たくなかったんですよ。でも、どうやったらこれからも心地良く運動を続けていけるだろうかと考えていたときに、東京レガシーハーフマラソンに声を掛けていただきました。ただ、私は本当に長距離ランが苦手だったので、最初は断ろうと思っていたんです。でも、大会のコンセプトなどを聞かせていただいて、「あ、これは別に完走できなくてもいいし、どれくらいのタイムで走れた・走れなかったというより、まずはやってみること、一歩踏み出してみることに意味がある」と思ったんです。それに、オリンピック・パラリンピックに出ているアスリートだから何でもできると思われることに私は違和感があったんですよ。ただ、確かに「入江さんならハーフでも大丈夫!」って思っちゃいますよね。私も入江さんだったら全然走れるという自信がある(笑)。

入江 ええっ!(笑)

一ノ瀬 はい(笑)。だから皆さん、そうした眼差しでアスリートを見ている。そういうふうに思ってもらっている自分が実は苦手なことに挑戦して、そのままの姿を見せることにもきっと意味があるんだなと思って参加させていただきました。

大嶋RD なるほど。実際に大会に参加して、ご自身の中で何か変化などはありましたか?

一ノ瀬 私の今の生活は色々な場所に行くことが多いのですが、ジョグはどこでもできるので、スーツケースにとりあえずランニングシューズとウェアだけ入れておけば継続できる。そうした新しい運動との付き合い方、新しいセルフケア術を手に入れたということが一番大きいですね。あとはコミュニティ。ランのコミュニティって本当に幅が広くて、すごくウェルカムな雰囲気があるんです。市民ランナーといった「市民○○」という言葉があるスポーツもランニングくらいですよね。市民スイマーとはあまり言いませんよね。

大嶋RD 言われてみれば、あまり聞かないかもしれませんね。

一ノ瀬 そう。だから、それくらい多くの人ができて、ある意味ハードルがすごく低いウェルカミングなスポーツなんだなと去年感じました。だから、ランニングに出会えてすごく良かったなと思っています。

コミュニティを広げるランの力

大嶋RD 一方で、先ほどハーフマラソンはキツかったというお話もありましたが、どうしてまた2回目の挑戦を決めたのでしょうか?

一ノ瀬 やっぱり去年がすごく面白かったからです。キツかったけど、それを超える面白さ、楽しさがありました。それにこれまでは友だちやよく行くカフェの常連さんたちとの間ではランの話題って別に出なかったんですけど、私が去年走ったことによって「私も実は走っているんだよね」とか「今度、何kmランしない?」という話が周りから挙がるようになって、“実はランナーだった”という人たちが浮き彫りになったんです(笑)。そういうコミュニティを広げてくれる力をすごく感じました。だから、走っているときだけじゃなくて、走っていないときの生活も豊かになって、つながりができていくから「これなら長く続けていけるかも」と感じたのが大きかったですね。

大嶋RD ランニングによって新しい生活のコミュニティ、気づきを得ていらっしゃるというのは私たちとしても嬉しいですね。東京レガシーハーフマラソンを通じて新たな発見、チャレンジなどはできましたか?

一ノ瀬 私にとっては走ること自体がすごく大きなチャレンジだったんですよ。だから、自分の中でできない・苦手と決めつけているランと正面から向き合って、完走することができたというのはある意味、克服したという自信になりました。何よりも苦手だった長距離ランをやってみようと一歩踏み出して、本当に完走できるか分からなかったけどギリギリ完走できたというのはすごく大きな自信になったと思います。