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SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

TOKYO LEGACY HALF 2025

陸上・棒高跳の日本記録保持者 澤野 大地さん
ランニングを始めて人生がガラッと変わった。
目指すは『棒高跳を跳べるマラソンランナー』か、『マラソンを走れる棒高跳選手』!

東京レガシーハーフマラソン2025にゲストランナーとして出走する陸上競技・棒高跳の日本記録保持者で、2004年アテネ、2008年北京、2016年リオデジャネイロと夏季オリンピックに3大会出場した澤野大地さんにインタビュー。マラソンを始めたきっかけやランニングの魅力、新しい挑戦を始めたことで変わったこと、そして東京レガシーハーフマラソンにチャレンジしようと思っている皆さんに向けてメッセージをいただきました!

もともと走ることが好き、いつかもう一度長い距離を

もともと陸上競技を始めたきっかけは「走る」ことが好きということが根本にあって、中学校の部活でも長距離を走りたくて陸上部に入りました。ただ、中学1年の夏に顧問の先生から「棒高跳をやってみないか」と誘われて始めてみたところ、これがめちゃくちゃ楽しかったんですよね。一気に魅力にハマってしまって、そのまま棒高跳を28年やり続けることになりました。でも、いつかもう一度長い距離を走りたいという思いはずっと持っていたんです。

それで2021年に現役を引退した後に少し体調を崩してしまった時期があって、お医者さんからは「適度な運動をしてください」と言われました。元アスリートですから、その適度がどれくらいなのかは分からなかったのですが(笑)、じゃあ、ちょっと走ってみようかと思って、近所の公園を走り始めていたら、やっぱり楽しくて、毎日のように走り始めるようになりました。それが2023年の10月ごろですね。

「東京マラソン」という目標ができた瞬間、人生はガラッと変わった

走り始めると、これもアスリートだからでしょうか、今度はタイムを追い始めるようになるんですよ。来週はもっとタイムを縮めてみようとか、心拍数をもっと落とすにはどうすればいいかとか色々と目標ができる様にもなって。

そんな中、東京マラソン財団のスポーツレガシー事業の取り組みの1つとして実施されている「ミニ東京マラソン」などに関わらせていただいている中で、東京マラソンを走ることになったんです。それと同時に「東京マラソン」という大きな目標ができた瞬間、僕の人生はガラッと変わりましたね。日常の業務、子育てなど色んなことがある中で、ランニングという一つの新しいタスクが出てきたのですが、それを生活の中にはめ込んでいくのがまた楽しくて、面白かった。目標に向かって、毎週、毎日やるべきことをやっていった結果、東京マラソンに行きつくわけですが、その過程の中で人生そのものが変わったと思えるくらい自分自身が明るくなり、元気になったなと思いますね。

東京マラソンでつながっている一体感に感動

僕自身、棒高跳では世界のトップアスリートの一人として競技を続けてきたわけですが、ランナーとしては一般の市民ランナーの方たちよりも遅いレベルです。それでも、自分の目標を達成するために頑張るということに対して、とんでもない自己満足度と自分自身への感動を覚えることができました。それはランナーの皆さんがそれぞれの環境、立場で同じように目標に向かって頑張っていらっしゃることでもあり、それってすごいことだなと。

僕にとって東京マラソンが初めてのフルマラソン大会だったのですが、スタート地点に行きつくまでに何十分もかかる中、「あ、周りの人たち全員がこれから走るんだ」と、ふと思ったんです。しかも、全員がそれぞれの目標に向かって頑張ってきた人たちですよね。それぞれが色々な目的、目標を持って走っていると思うのですが、そこにいるみんなが東京マラソンというものでつながっている一体感にすごく感動してしまって、スタートラインに行くまでに涙が出てくるくらいでした。スポーツの素晴らしさって、こういったところにもあるんだよなということを改めて感じさせてくれたのが、このランニングだったかなと思います。

「目標」ができることが非常に大きな充実感に

ランニングという新しい挑戦を始めてから起きた一番の変化は、やっぱり「目標」ができるということですね。人生の中に仕事や業務以外での目標ができて、それに向かって突き進むという、アスリート時代には当たり前にやっていたことを今またできていることが、僕の中では非常に大きな充実感になっていて、単純に自分自身が元気になっています。

もちろん運動しているから身体的に健康になっているのですが、一方で精神的にもすごく元気になっている感覚があるんですよ。たぶん、明るくなったと思いますし(笑)、何事もポジティブに捉えられるようになり、結果、それが行動力にもつながって、色んな人と会おう、もっと色んな話をしようと思うようにもなりました。それこそ、色々なアイデアもボンボンと出てきて、それがまた新しい仕事に発展していくことにつながっているので、いいことしかないなという気がしています。ランニングと出会って、ランニングをまた始めて、本当に人生が変わったなと僕自身、思っています。2年くらい前の僕とは別人になっていますね(笑)

「目標」「挑戦」は日々の自分の成長を感じられるものた

僕自身、競技者としての挑戦はオリンピックのメダルや6mを跳ぶなど、トップ・オブ・トップの限られた人しか到達できないことが目標になっていました。でも今、僕が目指しているところは特別に限られたものでもなく、余裕でクリアしている人もたくさんいます。それでも、今の目標や挑戦は自分自身が日々成長していくものを表しているものになるので、自分の成長を感じられるところなのかなと思っています。

僕もランニングという新しい挑戦を始めてまだ2年、3年ですので、この先も自分自身の生涯スポーツの一つとして続けていきたいなと思っています。最終的には「棒高跳を跳べるマラソンランナー」か、「マラソンを走れる棒高跳選手」を目指していきたいと思っています(笑)

入江陵介くんのタイムは超えたいな(笑)

フルマラソンを走ったら、今度はハーフのタイムも欲しくなったのが東京レガシーハーフマラソンに挑戦する一つの理由です。あとは、発着地点の新しい国立競技場は現役時代に1度だけ試合で跳んだことがあるので、その時以来そこをまた走れるというのは一つの良い思い出になるのかなと思っています。

また昨年、入江陵介くんが東京レガシーハーフマラソンに挑戦する姿を見ていて、ちょっとうらやましかったというのもありますね。彼も現役を引退してからランニングに挑戦して東京レガシーハーフマラソンで2時間を切りましたから、そのタイムは超えたいなと思っています(笑)。具体的な目標を言いますと、1時間45分を切りたいですね。東京マラソンとはちょっと違った感動があるのではないかなと想像していますし、今大会は学生チームエントリーもありますから学生さんの参加も多いと思うので、たくさんのランナーの皆さんとの交流も楽しみにしています。

レガハが皆さんの人生を変えるきっかけになってほしい

僕はランニング、走ることを始めて、目標が見つかった瞬間に人生が変わりました。同じように、これまで走ったことがない人やランニングにちょっとでも興味を持っている人が東京レガシーハーフマラソンを走ってみようと思うことでそれが目標となり、そこに向かって練習などをしていく中で、その人たちの生活のリズムや、そもそもの人生が変わるきっかけになってくれたらいいなと思っています。

ちょっと話が飛躍するかもしれませんが、日本陸上競技連盟の新会長になった有森裕子さんが「陸上、またスポーツは人生において欠かせないものだと、日本の皆さん誰しもに思ってもらいたい」とおっしゃっていました。それは日本ではスポーツがまだ文化として根付いていないからこそ、そのような思いが生まれるのだと僕自身も痛感してきたことです。

「走る」ことは運動の原点でもあるので、人生において体を動かすことは欠かせないことだよねということをみんなに思ってもらえる一つのきっかけに、この東京レガシーハーフマラソンがなったらいいなと思っています。

まずは一歩踏み出すこと、行動を始めることが大事

そして、何事にも挑戦することは大事なことだと思っています。それは100%最後までやり切ろうと思うことよりも、一歩踏み出すこと、行動を始めることの方が大事なんですね。一歩踏み出して、行動し始めたら「意外といけるじゃん」みたいな形でスーッと行けてしまったりするんですよ。それは僕自身が「フルマラソン行けるのかな?」と思いながらも、挑戦を決意してやり始めたらだんだんと走れるようになり、結果、初めてのフルマラソンで4時間を切れたわけです。

そういうことって絶対に皆さんにもあると思うので「躊躇せずに、まずはやってみようよ」とお伝えしたいですね。それで本当に無理だったら目標を変えればいいし、やめてしまってもいい。それで後悔することはないと思うんです。そして、僕自身がそうであるように、挑戦を続けることで人生が豊かになっていくと思っていますので、まずは一歩踏み出すこと、挑戦することが一番大事だと思います。