「人とのつながり」や「縁」を感じるレース
大会前日に開催した「東京レガシースタジアム2025レガスタ大運動会」を盛り上げるM高史さん
東京レガシーハーフマラソン2025では、レースの出走だけでなく、金曜日から3日間にわたってさまざまなイベントに関わらせていただきました。無事にすべてを終えることができ、ホッとしています。
あれだけ多くのランナーが走る中で、「Mさん、頑張って!」と気づいて声をかけてくださる方が本当に多くて ──
その一つひとつの声に、改めて「人とのつながり」や「ご縁」を強く感じる大会でした。
僕は今、『M高史の部活訪問』という活動を通して、全国の中学・高校・大学の部活動を訪問しています。今回の大会では、かつて訪問した学校の生徒たちと再会する場面もありました。学生競技を引退した今でも、ランナーとして走り続けている姿を見て、胸が熱くなりましたね。
そして、今大会の一般女子の部で1位(陸連登録の部を除く)だった田中優花さんも、実はその「部活訪問」で出会ったひとり。彼女が1時間18分で完走したと聞いて、「速くて追いつけなかったなぁ」と思わず笑ってしまいました(笑)。
「心身ともに元気でハッピーに」の想いを
つなげていく
大会前日に開催した「東京レガシースタジアム2025レガスタ大運動会」を参加者と全力で楽しむM高史さん
「スポーツレガシーって何だろう?」と、よく考えるんです。僕にとってのスポーツレガシーは、スポーツや “走ること” を通じて、“心も体も元気でハッピーに” という想いを、たすきのように次へつないでいくことだと思っています。
やっぱり、心身ともに健康でいるからこそ、仕事にも打ち込めるし、趣味にもチャレンジできる。そんな前向きな循環を、スポーツの力で広げていけたら嬉しいですね。
大会前日に東京レガシーハーフマラソンEXPO 2025で開催したジャパンプレミアハーフシリーズのトークショーを盛り上げるM高史さん
東京レガシーハーフマラソンは、本当に華やかでにぎやかな大会ですよね。
あの明るく前向きな雰囲気が、全国のハーフマラソン大会にも広がっていけばいいなと思っています。
いま、全国各地では人気のある大会がある一方で、参加者が集まらず中止になってしまう大会もあります。大会が減ってしまうと、ランナーのモチベーションも下がってしまい、走る機会そのものが失われてしまう。そんな現状を少しでも変えたいという思いがあります。
ハーフマラソンなら、比較的開催しやすい規模感で実現できる自治体や企業も多いはずです。かつて東京マラソンが全国の大会を増やすきっかけになったように、東京レガシーハーフマラソンも、全国の大会をつなげていく “ハブ” のような存在になれたら嬉しいです。それこそが「スポーツレガシー」だと思っています。
ランナーの目線から見ても、ハーフマラソンは挑戦しやすい距離です。目標を立てやすく、達成感も十分に味わえる。
だからこそ、もっと多くの人がハーフマラソンにチャレンジして、全国の大会が盛り上がっていってほしいなと思っています。
障がいのある方たちが
楽しく体を動かす機会を作りたい
大会当日に行われたパラ陸上教室で参加した子どもたちとオリジナルのエクササイズ「ジャパササイズ」で体を動かすM高史さん
今回の大会では、レースだけでなく、パラ陸上教室やレガスタ大運動会など、さまざまなイベントにも参加させていただきました。国立競技場という特別な場所で、年齢や立場を超えて多くの人たちが思い思いのペースで体を動かす姿を見られたことは、本当に幸せな経験でした。
もともと僕は大学で福祉を学び、卒業後は知的障がいのある方のための施設で、職員として5年ほど働いていました。今でも週に3回ほど障がい者支援施設に通い、体操やウクレレ、歌などを通じて、みなさんと一緒に楽しい時間を過ごしています。純粋に「応援したい」という気持ちが、僕の原動力なんです。
“障がい”とひとことで言っても、その背景や状況はさまざまです。運動が難しい方もいれば、身体的な特徴を持つ方もいます。
でも、そんな中でも自然に体を動かしたり、楽しく笑い合えたりする ──
結果的にそれが運動になっていた、というようなコンテンツを作っていけたらと思っています。
体を動かすことで血流が良くなり、食欲がわき、気分も前向きになる。そうした「良い循環」が広がっていけばいいなと感じています。
今回の東京レガシーハーフマラソンを通して、多くの方々と交流する中で、これからもこうした活動を続けていきたいという思いが、より一層強まりました。
M高史の原点、施設で出会った天才ピアニスト
M高史さんと、福祉音楽家で自閉症ピアニストの渡部雄太さん。2016年に出会ってから音楽を通じて多くの人に笑顔と勇気を届けている。
神奈川県の知的障がい者施設で働いていた頃、ある一人の自閉症の方と出会いました。
その方は楽譜を読めないのに、音楽を一度聴いただけでピアノで完璧に再現できる ── そんな驚くべき才能を持っていたんです。
でも当時は、その才能を披露する機会がなく、部屋の中でおもちゃのピアノを弾いているだけで、「このままではもったいない」と心の底から思ったんです。
ちょうど僕自身も少し音楽をかじっていたので、「一緒にバンドを組んで演奏してみよう」と声をかけました。
それが、今の僕にとっての“エンターテインメントの原点”なんです。
最初は、自分が勤めていた施設のお祭りで仲間たちと演奏をしていました。
すると、その噂を聞いたほかの施設の方々から「うちにも来てください!」と声をかけていただくようになり、気づけば活動の輪がどんどん広がっていったんです。
その後も2016年に出会った福祉音楽家の渡部雄太さんと、イベント出演や福祉施設訪問など活動をご一緒することもあります。
それらの経験を通じて、「誰かに喜んでもらえることが、こんなに嬉しいんだ」と実感し、次第に“人を笑顔にする活動”に惹かれていきました。
そこから少しずつエンターテインメントの道へとシフトしていったんです。
最初は歌のモノマネから始まり、次第に自分の原点でもある“アスリート魂”を生かして、川内優輝さんのモノマネにもさせていただくようになりました。
今は、エンタメやスポーツ、そして「楽しいこと」を通じて、誰かの力になったり、応援したりできるような活動を目指しています。
人生の中で、誰にでも大きな出会いがあると思います。
僕にとっては、駒澤大学時代の大八木弘明監督、福祉施設で出会ったピアニスト、そして川内優輝さんをはじめこれまで出会った多くの方々との出会いがなければ、今の「M高史」は存在していなかったと思います。
元気よく、楽しく、笑顔で「現状打破!」
これまで保育園や福祉施設を訪問したり、さまざまなマラソン大会に参加させていただく中で、ほぼ0歳から100歳まで、本当に幅広い世代の方々と出会ってきました。
その出会いの一つひとつから、たくさんの気づきをもらっています。
僕はいつも、人生ってマラソンに似ているなと思うんです。
マラソンは、沿道の応援や多くの支えがあってこそ走れるものですが、実際に一歩を踏み出して前に進むのは自分自身の力。
自分の力で“現状打破”しなければならない ──
そのことを、出会ってきた多くの方々から教わりました。
「現状打破」という言葉は、川内優輝さんの座右の銘をお借りしています。人生の中では、思うようにいかないこともたくさんありますよね。ハーフマラソンでいえば、上り坂があったり、雨が降ったり…。でも、そんな状況もすべて含めて、前向きに、笑顔で、元気よく「現状打破!」と言える人生を送りたい。そして、周りで挑戦している人たちにも、全力で応援の気持ちを伝えていきたいと思っています。
人は誰かに貢献できた時に最も幸せを感じる
大会前日に開催したガイドランナー体験教室に参加するM高史さん
人は「自己実現を達成すること」よりも、「自分の得意なことを通じて誰かに貢献できた時」に、最も幸せを感じる ── そんな研究結果があるそうです。
そう考えると、チャリティランはまさにその代表的な形だと思います。走ることを通じて社会に貢献できる。多くのチャリティランナーが、その喜びを実感しているのではないでしょうか。
そして、もし寄付先の団体から直接「ありがとう」という言葉や笑顔が見えたり、交流の機会が生まれたりすれば、きっとその幸せはさらに大きなものになります。
チャリティする人と寄付先との距離が近づけば、そこから新たなご縁が広がり、巡り巡って自分にも返ってくる ──。
そんなつながりが生まれるのが、東京マラソン財団の「スポーツレガシー事業」やチャリティの素晴らしさだと感じています。
また、チャリティって、実は“推し活”にも少し似ていると思うんです。
ファンが推しのためにグッズを買ったり、クラウドファンディングで支援したりするのは、「その人が活躍してくれる姿を見たいから」。
チャリティも同じで、寄付先の団体やその先の人たちが幸せになる姿を見ることが、支援する側の喜びにつながります。だからこそ、チャリティももっと気軽に“推し活”のような感覚で参加してもらえたら嬉しいですね。
そして僕自身も、これからも走ることで誰かを応援し、誰かの力になれる喜びを感じ続けていきたいと思っています。